東芝が『SCiB』を改良しました!【大容量&急速充放電】

本編

東芝がリチウムイオン電池【SCiB】の新型[20Ah-HPセル]を発表しました。
この電池の性能は定格容量が20[Ah]、公称電圧が2.4[V]、電池セルの容量は 48[Wh] になります。
この容量の製品は以前から存在しています。容量面では特に目新しい部分はありません。
新型の電池では容量は変わりませんが、内部抵抗を40%低減しています。
内部抵抗の減少により、急速充放電性能が向上しています。従来の20Ahセルと比較して約1.7倍の入力性能と約1.6倍の出力性能を実現。
また、内部抵抗が少ないということは、充電時の発熱が少ないということでもあります。電気自動車などに使用した場合、電池の冷却システムを簡素化できるというメリットもあります。
新型のセルは従来のセルと同じ形状をしていることからセルを入れ替えるだけで急速充放電に対応した電池モジュールにアップグレードできます。
東芝のSCiBは以前から長寿命で知られていました。今回のセルは更にサイクル回数をアップしています。8000回の充放電試験によっても容量劣化はわずかとなっています。
メリットばかり取り上げてきましたが問題点もあります。SCiBはスマホなどに使われているリチウムイオン電池と比べると重たい電池です。
重量エネルギー密度は84[Wh/kg]しかありません。汎用のリチウムイオン電池18650電池は200[Wh/kg]であり同じ容量では2倍以上もSCiBの方が重たいのです。
体積エネルギー密度の面でも欠点が目立ちます。体積エネルギー密度は176[Wh/L]です。こちらも18650電池は500[Wh/L]であり3倍程度多くのスペースを必要とすることがわかります。
これらの点を総合して考えると、電気自動車の電池としては向いていません。大容量を確保するためには設置空間が多くなります。ただし、ハイブリッド車ではスズキのソリオハイブリッドなどSCiBの採用事例があります。
先ほど、電気自動車には向かないと述べましたが、全く使えないというわけではありません。電気自動車においても三菱自動車は東芝のSCiBを採用しています。10[kWh]程度の少ない容量であれば搭載することも可能です。
2022年春に発売開始となる三菱自動車の軽電気自動車にもSCiBが使われるのではないか?という説が散見されます。ただし、公式発表はありません。
東芝はSCiBの用途として、鉄道向け非常走行用電源/港湾クレーン向け回生電源/電動船/ハイブリッド車/定置型蓄電池システムに利用することを想定しています。
ところで、SCiBはこれまでのリチウムイオン電池とは何が違うのでしょうか?SCiBはチタン酸化物を負極活物質として使用している新しいリチウムイオン電池です。
容量面ではいまいちですが非常に安全性の高い電池となっています。釘刺し試験を行っても発火しません。
また、電池セル単体でみると6分間で80%まで急速充電することができます。マイナス30℃の環境でも放電できなくなることはありません。
急速充電性能と電池の容量はトレードオフの関係にあります。従来のSCiBでは急速充放電性能に特化した高入出力タイプセルと電池容量に特化した大容量タイプセルのどちらかを選択することになります。
今回、東芝はどちらの性能も併せ持つコンビネーションタイプを新たに発表しています。急速充放電と容量を両立させたタイプとなります。
SCiBはスマホなどで一般的に使用されているコバルト酸リチウムイオン電池には及びませんが安価なリン酸鉄リチウムイオン電池と同等程度のエネルギー密度を実現できます。
ただし、SCiBに使用されているニオブはレアメタルであり、安価な電池にはなりません。安価なリン酸鉄リチウムイオン電池に対するSCiBの優位性は【急速充放電性能】と【サイクル寿命】のみです。

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まとめ

  • 東芝が新しいSCiBを発売しました。
  • 容量と充放電性能を両立した万能モデルとなります。
  • 2022年はSCiBの普及に弾みがつくのか、注目されます。

電池技術

Posted by @erestage