夢の技術【酸素水素燃焼タービン発電】について!

本編

産業技術総合開発機構(NEDO)による、水素発電システムの開発が始まります。従来の燃料電池を超える発電効率を実現する計画です。従来の燃料電池の発電効率は45パーセントから65パーセントでしたが、新しい水素発電システムを利用では68パーセントを超えるとされています。
酸素水素燃焼タービン発電と呼ばており、基本的にはガスタービン発電機です。純粋に水素と酸素のみを燃焼して、1400度の高温を得ます。生成物は水蒸気のみです。普通に空気を使って水素を燃焼させると、窒素酸化物も生成されてしまいますが、酸化剤に純粋な酸素を使用することで、水蒸気のみが生成物となります。この高温高圧の水蒸気でタービンを回して、発電します。
このシステムを実現するためには、大気中から大量の酸素を抽出する必要があります。酸素を抽出する方法には主に「深冷分離法」、「吸着分離法」、「膜分離法」の三つの方法があります。
大量生産に向いているのは、深冷分離法で仕組みは比較的単純です。まず原料となる空気をマイナス20度程度まで冷却します。窒素の沸点はマイナス195度、酸素の沸点はマイナス183度です。このまま徐々に温度を上げていくと、先に窒素が気化するため、純粋な液体酸素を得ることができます。深冷分離法では、空気を冷却する時に大きなエネルギーを使いますが、複雑な化学反応も伴わず、安全かつ大量に酸素を作ることができます。
この酸素水素燃焼タービン発電は、単純なガスタービン発電ではなく、ブレイトンサイクルとランキンサイクルを組み合わせたオリジナルの発電方法です。
ブレイトンサイクルは、一般的に使われているガスタービンの仕組みで「気体を圧縮機で断熱圧縮して高圧にする」、「燃焼により気体を等圧加熱して高温にする」、「高温高圧の気体によりタービンを回転させる」という工程になります。
それに対してランキンサイクルは、蒸気タービンの仕組みで「ポンプで液体をボイラーに供給する」、「ボイラーで液体を等温加熱して蒸気とする」、「蒸気によりタービンを回転させる」という工程になります。水素燃焼時に生成する高温高圧の水蒸気からも、エネルギーを取り出します。
この仕組みにより、従来からあるガスタービン発電と比べて、発電効率は10パーセント程度向上する見込みです。 この事業名は「従来技術を凌駕する超高効率発電共通基盤研究開発」という名前です。国家事業で凌駕という言葉が出てきたのを、初めて見ました。
NEDOの資料によると、この水素発システムには、100万KW の水素発電所を1年間稼働させる場合、23.7億ノルマル立米の水素が必要だと想定されています。これは、燃料電池車223万台分の水素需要量に相当します。この試算は、発電所の稼働率を49%としており、稼働率が上がれば更に多くの水素が必要になります。
この水素発電システムの予算は、意外と少なく2020年度の予算は2億円となっています。超高効率発電共通基盤の研究開発費は意外と安いようです。もしかしたら、2021年から予算がアップしていくのかも知れません。
この事業の関連組織は「産業技術総合開発機構」、「宇宙航空研究開発機構 」、「JAXA 」、「東京工業大学」、「大阪大学電力中央研究所」、「石炭エネルギーセンター」、「川崎重工業株式会社」、「東芝エネルギーシステムズ株式会社」です。この中で宇宙航空研究開発機構が参加しているのが意外ですが、ガスタービン関連の技術を提供するのかも知れません。
このプロジェクトの資料では、「水素発電が拓く未来」が掲載されていました。
「水素発電の導入により、恒常的かつ大規模な水素需要が生じる。これにより原料の水素コストが下がる。水素のコストが下がることで、燃料電池自動車など他の水素利活用分野においても、波及効果が見込めるのではないか?」としています。
春頃のマスクのように、需要が増えると価格も上がるのではないかと考えてしまいそうですが、水素は石油などの他のエネルギー資源と比べると、流通させる仕組みも市場も未成熟です。大規模な水素需要が生じることで、それらが整備されると、水素燃料の調達コストが下がると考えられています。
現在研究している大規模な水素発電所は、2040年頃の社会実装を目指しているので、かなり先の未来になりそうです。その頃には燃料電池の効率も上がっている可能性も考えてしまいますが、今はそこに触れない方が良さそうです。

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まとめ

  • 燃料電池を超える発電効率を見込む水素発電の研究が開始されます。
  • 酸素水素燃焼タービン発電という新しい技術になります。
  • 水素発電所は2040年頃の社会実装を目指しています。

水素

Posted by @erestage