民間企業による核融合発電が進展!【2030年実用化】

2022年4月20日

本編

脱炭素ブームにより世界中で核融合への投資が進展しています。特にアメリカは熱心であり、核融合ベンチャー企業【TAE】が、2030年までに核融合発電を実用化するという夢のような発表をしています。

核融合発電は、水素を燃料としています。重水素と三重水素を核融合させ、ヘリウムを作ります。重水素はD、 三重水素をTと表記し、 D-T反応と呼んでいます。

重水素は、中性子が含まれている水素です。重水素には中性子が一つ、三重水素には二つの中性子が入っています。D-T反応の核融合が成功すると、重水素や三重水素の中にある中性子がはじき出されていきます。核融合発電は、この中性子の運動エネルギーを熱エネルギーに変換して発電機を動かします。

中性子から熱を取り出す仕組みは、意外とシンプルです。核融合炉の周囲を取り囲むように、ブランケットというものを設置します。このブランケットの中には、高圧の水が入っています。この水の中にある酸素原子と、水素原子が中性子を受け止めてくれます。中性子を受け止めることで高温になった高圧水を使用して、熱交換器で発電用の蒸気を作り、タービンを回して発電します。

日本には、この核融合炉に使用するブランケットを研究開発している企業があります。水の代わりに液体金属を使用するブランケットを【京都フュージョニアリング】が開発しています。

冒頭で説明したアメリカのベンチャー企業【TAE】は、独自開発した原子炉で5000万以上の安定したプラズマを発生させることに成功しています。このように原子炉内でプラズマを発生させることを、ファーストプラズマと呼んでいます。

プラズマという名前は有名ですが、多くの場合その実態は正しく理解されていません。物質を超高温に加熱すると、原子の中の原子核と電子が離れて、勝手に動くようになります。この状態がプラズマです。 

核融合を成立させるための条件として、ローソン条件と呼ばれる三つの条件があります。「プラズマが約1億以上の温度になること」、「1ccの中に、原子核の数が100兆個以上あること」、「プラズマの閉じ込め時間が、1秒以上あること」という条件です。この三つの条件すべてを、同時に満たす必要があります。現在の技術でも、1億度のプラズマを作ったり、原子核の数が1ccあたり500兆個などという個別の条件を単独で実現することはできています。先ほども説明しましたが、TAEはプラズマの温度についてローソン条件の半分となる、5000万を実現しています。

TAEは核融合に必要とされる1億を目指して【コペルニクス】という新型炉を開発し、建設資金2億8000万ドルを確保することに成功しています。これは日本円に換算すると300億円相当です。

ローソン条件によると核融合を実現するためには1ccの中に原子核の数が100兆個以上必要になります。幸いにもプラズマは磁場で動かすことができ、核融合炉では強力な磁石でプラズマを一点に集める仕組みが採用されています。従来の核融合炉の研究では、ドーナツのような形状をした、トカマクという仕組みが用いられています。磁場を使って、トカマクに中にプラズマを閉じ込めます。これは、1960年代にソビエトで開発された技術です。現在も多くの研究炉で採用されています。

TAEはトカマクではなく、磁場反転配位「FRC」を採用しています。磁器井戸による閉じ込めという技術であり、急速に進歩してきている最新のテクノロジーです。

日本の核融合の歴史と現状について確認してみます。

日本はトカマク型の研究炉JT-60SAを建設しています。これは1980年代に開発されたJT-60の後継です。 

JT-60SAは、10以上の歳月をかけた巨大プロジェクトです。建設費は630億円です。欧州が費用の3分の1を負担しています。計画では、令和2年には実験を開始する予定でしたが、 JT-60SAは統合試験運転の最中に故障してしまいました。原因は電気配線の絶縁不良です。放電による火花で、真空断熱容器が壊れてしまいました。

平成23年に公表されている当初の計画資料によると、2015年度末にファーストプラズマを実現する予定でした。当初の計画から、5年以上の遅れています。おそらく予算も、630億円では収まっていないのではないかと推測されます。

先代の JT-60は、1985年にファーストプラズマを実現しています。当時のエンジニアの大半は現場を去っていると考えられますが、伝承されずに失われた技術が数多く存在するようです。仮に1985年に25歳であったとしても、そろそろ定年になってしまいますが、そのくらいの若手社員を、核融合炉の開発に配属するとは考えにくいです。残念ながら、先代のJT-60SAは先に解体してしまったので、参考にすることも出来ません。後の祭りという言葉がありますが、お手本は残しておいた方がよかったのかも知れません。

2021年時点では損傷箇所の修理中となっています。 JT-60SAを再起動できるのは、2022年の2月以降と発表されています。

動画はこちら

まとめ

  • 脱炭素の投資資金は、核融合技術にも流れ込んでいます。
  • アメリカのベンチャー企業TAEが、プラズマの制御に成功しました。
  • ロケットのように、意外と民間企業が先に核融合発電を実現するのかも知れません。

 

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Posted by @erestage