油田を利用した水素生産が始まります!【プロトン】

2022年4月20日

本編

カナダのプロトン・テクノロジーズが、新しい水素生産方法の実用化を発表しました。プロトン・テクノロジーズは油田に酸素を注入することで、水素を取り出せると説明しています。

プロトン・テクノロジーズが使用する油田は、油の産出量が減った晩年期油田で、比較的安価に利用出来ます。酸素濃度の高い空気を晩年期油田の地中深くに流し込むと、地中に存在するガスやコークスといった重炭化水素が急激に酸化します。その反応熱により最終的には500度を超える高温になると予想されています。地熱発電も出来そうな温度です。

この高温により、最終的に一酸化炭素と水蒸気から、二酸化炭素と水素を作り出す、水性ガスシフト反応が発生し、空気よりも軽い水素のみが地上に上昇します。

地上でガス改質器により天然ガスなどから水素を生産する場合は、同時に発生する二酸化炭素を分離・貯留する必要がありますが、今回の仕組は地中深くで起こる反応なので放置することができます。したがって、二酸化炭素分離・貯留のコストがゼロになります。二酸化炭素の分離・貯留コストは意外と高いので、これは非常に大きなメリットになります。

目に見えない地中のため、適温に制御させる事が大きな課題となりそうです。地中に送り込む酸素の量で制御するしか出来ませんが、満遍なく送り込むのは容易ではありません。更に、発生した水素の回収率も課題になります。水素が勝手に地上に上昇するのは大変良いことですが、回収設備のない場所から漏れ出てくる可能性があります。水素の回収率が、生産量を左右する重要な要素となりそうです。

色々と課題はありますが、最大のメリットは生産コストの安さです。基本的には、地中に酸素を注入して、水素を集めるだけです。プロトン・テクノロジーズでは水素1[kg] を0.3ドルで生産できると発表しており、他の水素生産方法方と比べて非常に低コストで魅力のある技術です。

トヨタの燃料電池自動車【MIRAI】の水素タンク容量は5.6[kg]です。5.6[kg]に0.3ドルをかけると、1.68[$]となり、約200円で満充填することが出来ます。厳密には水素の圧縮費、輸送費などが上乗せされますが、これほど水素の値段が下がれば、ガソリン車などは敵ではなくなります。

プロトン・テクノロジーズでは、2040年までに人類が消費するエネルギーの10[%]を油田水素技術によって供給するという壮大な目標を掲げています。シェアの比較の参考として記載しますが、現在のサウジアラビアの原油シェアは12.7[%]です。

プロトン・テクノロジーズ はカナダのサスカチュワン州のプロジェクトで、年内に生産した水素の供給を開始するとしています。具体的な生産量は公開されていませんが、実用化に向けて着々と開発が進んでいるようです。

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まとめ

  • カナダで、油田を利用した水素生産が始まります。
  • 酸素を流し込んで水素を取り出すという、シンプルな仕組みです。
  • 実用的な生産量を得ることができるのか、注目されます。

 

水素

Posted by @erestage