【夜間も送電】太陽熱発電所が運転開始【チリ】

本編

チリに太陽熱発電所が開業しました。この発電所は、夜間も発電することができます。太陽熱発電技術について少し説明させて頂くと、理科の教科書に載っているような有名な太陽熱発電では、大量の鏡を設置し、中央のタワーに太陽の光を集め、集められた熱を利用して水を沸騰させ、蒸気でタービンを回して発電するという仕組みです。
今回チリに建設された太陽熱発電所には、セロ・ドミナドールという名前がついています。タワーの高さは250メートルもあります。周囲にある太陽光を集める鏡が1万600枚も設置されています。タワー上部で溶融塩を加熱するという仕組みになっています。
セロ・ドミナドールの発電出力は、最大110メガワットです 。キロワットに直すと11万キロワット になります。これを一世帯5キロワット として計算すると、約2万世帯の電力を賄うことができます。
太陽熱発電は、かつて日本でも実験されていました。日本ではサンシャイン計画という名前で、太陽熱発電の実験が行われていましたが、残念ながら想定未満の出力しか得ることが出来ず、実用化には至りませんでした。太陽熱発電は、太陽光発電よりも立地条件がシビアです。
セロ・ドミナドールが建設された南米のチリは、縦に長い国土であり、その特徴的な形から子供達にも知名度が高い国です。隣のボリビアなどは、名前の響きからアフリカの国と間違われることもあるのに比べ、チリはかなり有名です。
縦に長い国土を持つチリですが、赤道に近い地域(低緯度の地域)もあり、日本よりは太陽熱発電に向いています。
今回、太陽熱発電所セロ・ドミナドールが建設されたのは、アタカマ砂漠です。世界で最も乾燥した砂漠と言われており、アタカマ砂漠への道は、死への道であると恐れられていました。現在は安全な砂漠です。日本からも普通にパック旅行などが設定されています。夏休みの旅行に良いのではないでしょうか。
アタカマ砂漠などがある赤道に近い地域は晴天率が高く、太陽光発電も多数立地しています。日本の電力会社も、四国電力などがチリのメガソーラープロジェクトに参画しています。
技術的に確立されている太陽光発電と比べると、太陽熱発電は実績が乏しいです。なぜチリは太陽熱発電所を建設したのでしょうか。冒頭でも説明しましたが、太陽熱発電所は夜間も発電することができるという大きな優位性があります。溶融塩は融解潜熱が非常に大きいという特徴があります。つまり大量の熱を蓄えることができます。
今回のセロ・ドミナドール以外にも、アルキメデス太陽熱発電所では溶融塩1300トンを使用しています。この溶融塩を540度まで加熱することで、80メガワットアワーに相当する熱エネルギーを蓄えることができます。昼間に溶融塩を加熱しておくことで、夜間に蓄えられた熱エネルギーでお湯を沸かし、蒸気タービンを回すことができます。
このような仕組みであるため、ある程度の出力変動を吸収することができます。電力網が不安定な太陽光発電は、調整用の電源を確保する必要がありますが、太陽熱発電所は調整余力としても使えるというメリットがあります。
但し、大量の熱を蓄えているということは、同時に火災のリスクもあります。発電施設の数は太陽光発電所よりも遥かに少ないにも関わらず、太陽熱発電所の火災事故が度々報道されており、太陽光発電よりも火災リスクが高いのかもしれません。
先ほど触れた太陽光発電の出力変動の問題を吸収する製品として、テスラは大容量の定置型電池メガパックを提案しています。太陽光発電とメガパックの組み合わせでも、太陽熱発電所と同等の仕組みを構築することができます。
太陽熱発電所は、熱を長時間保持できる仕掛けにはなっていません。温めた溶融塩は自然に冷めていくため、エネルギーを保持できる時間には制限があります。チリのセロ・ドミナドールでは17時間30分が限界となっています。この点においては、やはり電池の方が有利です。
但し、太陽光発電と定置型電池の組み合わせよりも、太陽熱発電の方が低コストになる可能性があると考えられています。まだ結論は得られていませんが、太陽光発電と太陽熱発電、どちらが低コストになるのかは10年後には明らかになっている筈です。

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まとめ

  • チリに新しい太陽熱発電所が開業しました。
  • 日射量の多い赤道に近い地域では、太陽熱発電も有力な選択肢です。
  • ライバルとなる太陽光発電とのコスト競争で、どちらが勝つのか注目されます。