日本のサンシャイン計画を最短で理解する!

本編

水素自動車の原点とも言える、日本のサンシャイン計画について取り上げます。
サンシャイン計画は、1974年から2000年にかけて実施された国家プロジェクトです。テーマは4つあり「石炭の液化」「地熱利用」「太陽熱発電」「水素エネルギー」という構成になっています。最後に出てきた、水素エネルギーが今の水素自動車、燃料電池自動車に繋がっています。
一つ目の「石炭の液化」は、1937年の人造石油製造事業法から始まっています。この人造石油製造事業法に基づいて【北海道人造石油】という会社が設立されました。北海道人造石油は年間7000キロリットル の【人造石油】を製造しました。このように石炭から人工的に石油をつくる技術は古くからありますが、現在、稼働しているプラントはありません。
石炭液化に関するサンシャイン計画の最終報告書では、「石油供給の緩和に伴う原油価格の下落等により石炭液化油の価格競争力が低下したことにより、 パイロットプラント後のデモプラントを経て商業化へという石炭液化技術の実用化が困難となった」と記載されています。要約すると、採算が取れないというのが結論です。
この報告書が作成されたのが平成11年のことです。今から20年くらい前です。当時の人造石油は、1バレル56ドルのコストが掛かっていました。現在の原油価格は1バレルで53ドル程度となっているので、今の水準であれば、もしかしたら採算が取ることができるかもしれません。但し、環境保護・脱石油の流れに逆らう事業を、新たに始めるというのは現実的ではありません。
二つ目の「地熱利用」について説明します。地熱発電は比較的と有名で、原型は1912年からあります。地熱発電が普及しない大きな理由は、年々出力が低下するという宿命を背負っているためです。出力を維持するためには、井戸を掘り続ける土木作業が必要です。
この井戸の事を生産井といいますが、この生産井を掘るには5億円以上のコストがかかります。サンシャイン計画などの補助金がないと、掘削事業はできません。サンシャイン計画の終わった2000年以降、生産井は増えませんでした。現在は2000年の半分以下にも満たない発電出力に低下していると推定されています。
3つ目の「太陽熱発電」ですが、実はこれが一番駄目でした。太陽光発電ではありません。熱で発電する計画です。サンシャイン計画という名前にもあるように、この太陽熱発電が目玉プロジェクトでしたが、計画通りに出力が得られず、結局廃止されました。海外の砂漠のような地域であれば現実的ですが、日本の気候では中々難しいものがあります。太陽光発電の方が現実的です。
そして2020年現在、四つ目の「水素エネルギー」だけが残っています。トヨタの燃料電池自動車【ミライ】などは、僅かに残るサンシャイン計画の遺産です。
サンシャイン計画の費用について説明させて頂きます。
サンシャイン計画は、1974年から2002年にかけて、総額で1兆3000億円を投入しました。ここまで述べてきたように、これだけの予算を投入しましたが、成功している事業はほとんどありません。先程も述べた通り、水素エネルギーだけが残っていますが、現時点では事業として成立はしていません。
水素エネルギーについては近年、アメリカでもカリフォルニア州などの先進的な地域で導入が少しずつ始まっています。但し、水素を作ること自体にエネルギーが必要なので、サンシャイン計画の目指した「新エネルギー」と位置付けられるかは、評価が分かれるところです。

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まとめ

  • チリに新しい太陽熱発電所が開業しました。
  • 日射量の多い赤道に近い地域では、太陽熱発電も有力な選択肢です。
  • ライバルとなる太陽光発電とのコスト競争で、どちらが勝つのか注目されます。