【10000m】トヨタの新しい風力発電システム【凧利用型】

2022年4月20日

本編

トヨタ自動車がタコを利用して風力発電を実現するという新しい技術の実演を行いました。タコ焼きのタコではありません。空を飛ぶ【カイト】のほうのタコです。
2022年3月27日
静岡県湖西市の湖西運動公園にて実演デモが発表されました。
親子たこあげ大会との共同開催となっています。
成層圏に吹いているジェット気流を利用して
風力発電を実施する試みです。
ジェット気流は上空10000m前後で吹く強い風です。
風の向きから【偏西風】とも呼ばれています。
飛行高度
2020年:高度01000[m](実績値)
2025年:高度05000[m](目標値)
2035年:高度10000[m](目標値)
発電量
ジェット気流の速度は 80[m/s] 程度です。
風力発電は年平均 6.5[m/s] の風が必要とされています。
通常の風力発電の10倍以上の発電量を期待できる。
実演されたカイトは
縦:1[m]
横:7[m]
重さ:約4[kg]
カイト自体に発電機能はありません。
カイトが風によって上下すると
ウインチが回転し発電する仕組みです。
現在は一般家庭【3日分】程度の発電量です。
これは【1年間】飛行しての発電量と説明されています。
どれくらいの発電量があるのか計算してみます。
一般家庭の消費電力を1日10[kWh]と仮定します。
3日で30[kWh]=30000[Wh]
365[日] ? 24 = 8760[時間]
30000[Wh] ÷ 8760[時間] ≒ 3.42[Wh]

将来構想
トヨタ自動車の構想では
縦:100メートル
横:1000メートル
大型発電カイトを実現するとしています。

イメージを見るとソーラーパネルも付いている?
造れないことは無さそうですが、問題は飛ばせるか?

海外でもカイトを風力発電に利用する構想があります。
イタリアでは2000年代から
タコを利用した風力発電
カイトジェン計画がありました。
発電出力:50[MW]

カイトジェン計画は国家プロジェクトではなくトリノ市の セクオイア・オートメーション という民間企業が推進していた風力発電プロジェクトです。

イッポリート社長は「現在普及しているプロペラのついた風力発電機による地上の風ではなく上空に吹いている強風を利用できないか?」と考えていました。

タコの高度は1000[m]程度。
成層圏までは届きません。
地上にあるメリーゴーランドのような発電装置を回転させると説明されていました。
地上側に発電機を置くというコンセプトはトヨタと同じです。
すべてのタコが同じ方向に引っ張られると仮定すると風があっても回転しないのでは?円を描くような風の地域が必要?
セクオイア・オートメーションとしては「メリーゴーランドを回転させるには各々の凧が回転しなければならないがこれらは必ずしも円を描く必要はない。」と見解を述べていました。
セクオイア・オートメーションの開発した三軸センサー【SeTAC】を利用することでタコの制御が可能であると説明していました。
質量2000[トン] のカイトジェンは 84[MW] の発電出力を得られます。
質量2000[トン] の物体が風の力で勢いよく回るために必要な風速は非公開です。設置面積が非常に大きいのでは?
出力100万kWの原子力発電所と同じ面積でカイトジェンは同じ発電出力を得られると説明。

発電コストは0.15[ユーロ/kWh]日本円に換算すると20[円/kWh]です。それほど、安くはありません。普通の風力発電より少し高いくらいです。

欧州宇宙機関【ESA】はカイトジェンを火星ミッションのエネルギー源として利用できないか検討していました。
火星に設置した太陽電池は砂の影響で発電出力が低下する問題があります。
欧州宇宙機関の他にも公的機関では産業研究センター、トリノ市営エネルギー会社、生産活動省、ピエモンテ州もカイトジェンに興味を示した。
2006年には1500万ユーロの補助金を獲得することに成功しました。日本円に換算すると20億円になります。

イッポリート社長によると「投資したいというメールは2000件以上!イスラエルやキューバなど世界各国からカイトジェン誘致の提案もある。」と説明していました。
しかし、セクオイア・オートメーションの現状を確認してみたところ既に事業を停止していました。非常に残念です。

動画はこちら

まとめ

  • トヨタがタコを利用した風力発電を開発しています。
  • イタリアの企業は開発に失敗しています。
  • トヨタは夢の技術を実現できるのか、2035年が楽しみです。。